病院の差額ベッド代は必ず支払う必要があるのか

これまで4回入院したことがあります。40代で4回と言うのは若干多いでしょうか。もしかすると男性の場合、入院したことがないという人は相当な割合でいるのかも知れません。

以前祖父が3週間程入院したとき、退院時の費用をとても気にしていました。

「手術までしたのだから数十万円はかかるだろう」

そう話していたのを覚えています。しかし実際に退院時に請求された金額を見て祖父は驚きました。約2万円だったのです。

「おい、どういうことだ? 間違いじゃないのか」

請求書を見て確認してみると、間違いではありませんでした。

もうその請求書は捨ててしまったので、数字は若干異なっていると思いますが、覚えている範囲で紹介します。これはあくまでも75歳以上であった祖父の場合で、年齢や収入によって数字(負担割合や限度額)は異なります。

医療費

まず、医療費は約100万円でした。

祖父は1割負担だったので、100万円×0.1=10万円ですが、

住んでいる自体体の窓口に申請して「限度額適用・標準負担額減額認定証」を受け取り、病院の窓口で提示したところ、

入院時の自己負担限度額は15,000円となりました。

仮に上記の認定証を持参していない場合、病院で10万円を支払うことになりますが、自己負担限度額15,000円との差額である85,000円は手続きにより後から返金されます。

食事代

次に、食事代は28,980円(460円×1日3回×21日)でしたが、

「限度額適用・標準負担額減額認定証」の提示により、

1回の食事代が460円から100円に減額されたため、100円×1日3回×21日=6,300円となりました。

医療費(15,000円)と食事代(6,300円)を合わせると約2万円です。

祖父:「本来は100万円かかるわけだろ。残りの98万円はどうなるんだ?」

私:「ちゃんと病院は受け取れるはずだよ」

祖父:「誰から? 誰が支払うんだ?」

私:「保険料や税金から」

祖父:「国の借金が増えていくのが分かるな」

ちなみに心臓バイパス手術は400万円程掛かることがありますが、上記のように自己負担額の上限がありますので、数万円で済んでしまう可能性があります。

「限度額適用・標準負担額減額認定証」とは

「限度額適用・標準負担額減額認定証」とは、会社(各自治体の窓口)に申請すれば発行されるもので、医療機関等の窓口に提示すると、保険適用の医療費の自己負担限度額と入院時の食費が減額されます。

ふだん病院に提示する保険証(被保険者証)とは異なるものです。

収入によりますが、該当する方は入院前に申請して受け取っておいた方が良いです。

もし分からなければ入院前の説明時に病院の方に聞いておくと良いでしょう。

ちなみにこの認定証に記載されている区分を見ると、例えば75歳以上であればその世帯全員の年金収入額が80万円以下かどうかなど分かるものとなっています。

http://www.tokyo-ikiiki.net/easynavi/kyufu/1001166.html(参考:東京都後期高齢者医療広域連合のHP)

差額ベッド代について、絶対に覚えておくべきこと

入院時に、差額ベッド代について説明を受けると思います。

病院職員:「通常は4人部屋ですが、入院日にベッドの空きが無い場合は2人や1人の個室に入っていただきます。その場合は差額ベッド代がかかります。よろしければこの承諾書にサインをお願いします。」

おそらくこのような説明でしょう。

確かに大部屋が空いているかどうかは入院当日まで分かりません。急患もいますし入院患者は毎日入れ替わります。

個室代は少なくとも1日あたり5,000円以上かかるはずです。一週間入院したらそれだけで35,000円です。もちろん保険適用されないので全額自己負担です。人によっては医療費より高くなるでしょう。

私も入院時に上記と同様の説明を受け、承諾書へのサインを求められました。

…拒否しました。

事務の方は一瞬ののち、

「大部屋のみ希望ですね」

と言い、その話はそのまま終わりました。

以下のような厚生労働省からの通知があります。
○特定療養費に係る療養の基準の一部改正に伴う実施上の留意事項について
(平成九年三月一四日)(保険発第三〇号)
(六) 特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。
(七) したがって、特別療養環境室へ入院させ、患者に特別の料金を求めることができるのは、患者側の希望がある場合に限られるものであり、救急患者、術後患者等、治療上の必要から特別療養環境室へ入院させたような場合には、患者負担を求めてはならず、患者の病状の経過を観察しつつ、一般病床が空床となるのを待って、当該病床に移す等適切な措置を講ずるものであること。
(八) 特別療養環境室へ入院させた場合においては、次の事項を履行するものであること。
ア 保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々についてそのベッド数及び料金を掲示しておくこと。
イ 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。
ウ この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。

差額ベッド代は支払う必要があるかどうか、国は分かりやすく広報すべき

「その時は個室しか空いてなければ差額ベッド代を支払わなければならない」というような説明だったため、さすがに事務員の方を怒ろうかと思いました。

もし制度をよく知らない患者だったら、きっと承諾書にサインしてしまったでしょう。

高齢の方なら尚更です。ここで承諾書を拒否したら入院させてもらえないんじゃないかと思うはずです。

厚生労働省は、患者が希望しなければ差額ベッド代を支払う必要がないことを明確に広報すべきではないでしょうか。

東京都に患者の声相談窓口というものがあります。参考までに。

 「医療に関する問題を自ら解決するための助言等を行い、患者と医療機関等との信頼関係の構築を支援します。
医療行為における過失や因果関係の有無、責任の所在を判断・決定する機関ではありません。また、医療機関との紛争の仲介や調停は行いません。

東京都医療安全支援センター「患者の声相談窓口」は、都内の病院(患者20人以上の入院施設を有する医療機関)の医療に関する事項についての相談を受け付けています。
診療所、歯科診療所等に関する相談は、当該診療所等の所在地の保健所が窓口となります。

相談は原則、電話で受け付けております。
専用電話番号 03-5320-4435

平日9時~12時、13時~17時
※ 相談時間は原則30分以内です。

詳細は以下のホームページで確認してみてください。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/iryo/sodan/madoguchi.html

 

▼病院を受診するときは病状等を一枚の紙にまとめて持参すると良いです。

良い病院はどう選ぶべきか:病状等は一枚の紙にまとめて医師に渡そう